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大谷 環 エッセイ
​「ギター万歳(その一)」


​僕はプロだから(プロのくせに、という言い方もあるかな?)ギターが好きである。もう四半世紀以上の付き合いになるけれど、嫌気がさすこともなく楽しい関係が続いている。演奏したり、教えたり、編曲したり、たまに録音もありという仕事の内容だけれど、何をやっても面白いという幸せ状態なのだ。ギターの持っているキャラクタのおかげだと思う。


ギターは何といっても一人でメロディも伴奏も一緒に弾ける数少ない楽器の一つである。同じ条件を満たす楽器は、西洋のものではピアノとハープぐらいである。あとの楽器では独奏は不可能か、無理がある。まずこのキャラクタがすごい。
だからギター独奏曲のレパートリの数はピアノに次いで堂々第2位の順位だ。音が小さいとか、音域が広くないとか、弦が替わることによって音が繋がらなくなるとか、ずいぶんデメリットはあるのに、それでもギターが圧倒的に魅力がある理由はなにかというと(もちろんこれは後から判ったことで、僕自身は気づかずにギターを選んでいたということなのだ)、同じ弦上でメロディを歌えるということに尽きるのではないかと思う。

これはピアノもハープもまったく歯がたたない。まさしくこれができるからこそ本物の“歌”が楽器から生み出せるのだ。


音楽は「歌と踊り」が最初だと言っても反対する人はあまりいないと思う。器楽はそれのずっと後になって興ったわけだから、歌と踊りを模倣していけば練習はまず間違いがない。
実際に曲のメロディを歌ってみると、よく聴くと音と音の間をつなぐ音があることに気づくはずだ。オペラ歌手などはこの音で勝負しているようなもので、うまい歌手はこれが本当に見事なのだ。かれらはそれをパッセージュといってとても大事に考えている。


ギターはそれを正確に再現可能な唯一の独奏楽器なのだ。これを忘れてギターの面白さは語れない。​

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