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大谷 環 エッセイ
​「上達のスパン」


スペインのバルセロナに有名な建築家のガウディが設計した教会「サグラダ・ファミリア」がある。ある、といっても出来上がってはいなくて建造中である。うわさでは出来上がりは100年後とも、200年後ともいわれている。日本やアメリカではこの時間が待てるかなと思う。商売になることだけが先行している文化なので、こんな悠長なことは言ってられないだろうなあということだ。

そのままだと何の特徴もないためか、早いことを直ぐウリにしたがるが、たとえば新幹線を使って目的地に30分早く着いたからと言ってどれだけの得をしているのかなあと思うことはある。考える前に「早い=良い」というふうにこちらが洗脳されてしまっているわけだ。

 

ギターぐらいはそういう“常識?”から逸脱して楽しみたいものだ。5年、10年、20年のスパンで考えたらどうだろう。ギターに限らず良い趣味とは そんなものと思う。芸術の世界までまわりのテンポに毒されることはないというのが僕の持論だ。実際にレッスンをしていても気づくのは、なにも早く仕上げられる人だけが、充実した音楽生活をしているわけではないということだ。レパートリがこの10年間全然変わっていないという人だって充分楽しんででいるのだ。量はふえないが音楽がどんどん深くなっていって味わいが増してゆくのだから、教える側の楽しみも尽きず、レッスンがマンネリ化することもない。そのプロセスは一言で言えば、限りなく小さな変化に気づくことが出来るようになっていくということだ。


その感受性の変化こそが財産なのだ、変化の速度は現在私たちの生活を取り囲むスピード感とは大いにちがうような気がする。いくら便利になってもこういう人間の個人能力の伸びるスピードは昔のままなのだ。そう考えればもっと気長にギターと接することが出来ると思うのだけれど、いかが?

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