大谷 環 エッセイ
「練習のコツ」
ゆっくり丁寧に。自分の音を聴いて。拍子をとって。歌いながら、とか。全部練習のコツである。決して間違いではない。でも核心を突いているようには思えないのだ。
僕だったら何はさておき、「心静かに」と言うだろう。ギターを弾く時間はとっておきの時間なのだから、最高に楽しさを味わえるようにセットするのが望ましい。そのための「心静かに」なのだ。
仕事(勉強でもいいけど)からギターの練習へいきなりなだれ込んでしまうと、寸前にやっていた仕事のリズムや感情が続いてしまって、ちっとも練習にならないことが実際にあるのだ。やっぱり仕事のリズムと音楽のリズムは違う。ましてあせったり、ざわついている頭脳は楽しみを見いだすことはできない。
僕はレッスンのときよく「仕事のことはドアの前に捨ててきてね」と言って始める。でも、どうしても気持ちが仕事を引きずっている生徒さんが来たときには、それなりに時間をとって、ゆっくり話をしたりして気持ちの波がおさまるのを待ってからスタートしている。そうすれば実質のレッスン時間はいつもより短くなるかもしれないけれど、その方がお互いに気持ち良く、楽しい時間を過ごせて、なお内容はずっと深く入れるのだ。
自分一人で練習をするときも心掛け次第で今よりもずっと効率のいい時間を過ごせると思う。練習を始めるとき「さあこれから自分のためのギター・タイムだ」と自分自身に言い聞かせるとか、深呼吸を3回ほどするとか、自分のやり方でいいから前の時間をうまくブレイクしてから新たにスタートするようにするわけだ。時間が無いというもっともらしい理由で、工夫がなくて習慣だけの無味乾燥な練習を重ねてしまうのはなんとしてももったいない。 本来毎日の練習は一回一回発見のある、非常にエキサイティングな時間なのだから。
