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大谷 環 エッセイ
​「触覚」


ギターを弾く上で最も大事な感覚は?と問われたら僕は「触覚」とこたえる。じゃ、聴覚はどうなの?という疑問もあるだろうが、聴覚は言ってみれば出てきた音をチェックする機能でしかなく、「音を出す」という作業に厳密に言えばかかわっていない。かんたんに言うと「聴いたときには手遅れ」ということだ。

右手の触覚の話に限ろう。ギターを弾くためには弦をひっかく(ちょっと言葉が悪いけれど我慢してもらおう)わけだが、思い出してほしいのだけれど、そのとき、弦の質(低音弦は金属が巻かれている。高音弦はナイロンで出来ているなど)、温度、張力、太さ、、、そんなことが実感されているだろうか。たぶんほとんどの人がよく判らずに弾いているというのが正直なところだろう。
ではこの感覚がどれほど重要(おもしろい)か実際に試してもらいたい。

いま練習している曲。よく覚えている曲であれば何でもよい。難しい曲でないほうがよい。長い部分は必要ない。むしろ1フレーズぐらいのほうがいい。左手を気にせずに、右手の触覚だけに注意をむけよう。まずは各指に返ってくる弦のテンションから感じてみよう。
この感覚はどこまでも深まっていくことが出来るのが面白い。

慣れてくると各弦のキャラクタをはじめ、もっといろんな情報が指から返ってくるのが判るようになる。スタートしてからものの5分も経たずに自分の音が艶やかになっていくのが実感できるはずだ。情報を受け取ろうという意志は感覚の窓口を開こうとするので、それを妨げる無駄な力が抜けてくるというおまけもついてくる。

そんなことは無理だという人は思い出してもらいたい。目の不自由な方がどんなスピードで点字を読めるかということを。人間の感覚は捨てたものではない。

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